COLUMN
2024/04/25

「0→1」ではなく、「100→1」を生み出す 独自のアプローチで推進する日本型トランスフォーメーション

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近年、絶えず変化するビジネス環境において、企業にはESG経営や人的資本経営などを通じた中長期的な価値向上と、短期的な成果創出の両輪での取り組みが求められています。しかし、成熟企業の多くは異なる事業目標・活動がもたらす個別最適化により組織のサイロ化が進み、企業全体として強い推進力を生み出せない傾向がみられます。

そこで、Ridgelinezは、成熟企業の全社変革を支援するためクリエイティブ機能を強化し、「Creative Hub(クリエイティブ・ハブ)」を2024年1月に発足しました。その役割とはどのようなものか、その狙いと独自のアプローチについて、上席執行役員Partner の平山将と、Chief Creative Directorの田中培仁が語りました。

※Forbes JAPAN BrandVoice 2024年4月25日掲載記事より転載。
本記事は、Forbes JAPANの許諾を得て掲載しています。 なお、所属・役職は掲載時点のものです。


日本はGDPでドイツに抜かれ、世界第4位に転落した。日本経済、日本企業の「失われた30年」をあらためて振り返った向きもあるだろう。

日本経済が再び浮揚するには、日本企業の変革が求められることはいうまでもない。どうすれば、その推進力が得られるのか。その答えを導き出すべく、2024年1月にRidgelinezでビジネスの知見をもったクリエイターが集結した組織「Creative Hub」が発足した。その役割とはどのようなものだろうか。上席執行役員Partner の平山将(写真左。以下、平山)と、Chief Creative Directorの田中培仁(写真右。以下、田中)に聞いた。

日本企業が目指すべきは「100 → 1」

「この数十年、日本企業は巨額な投資をし、時には社運をかけてさまざまな挑戦を続けてきた。ただ結果として大きな成果につながらず、大量のPoC(Proof of Concept:概念実証)と“イノベーションゾンビ”とでもいうべき塩漬け案件が残された状況が多いのではないでしょうか」

これまで300件以上のCXや新規事業案件などを手がけてきた平山は、日本企業の変革への挑戦と挫折をこう表現する。そしてクリエイティブの力を武器に、平山と二人三脚で新しいコンサルのかたちを切り開いてきた田中は、これまでのクリエイターロールにもその要因があると語る。

「企業内の事業、営業、研究開発、広告など部門ごとに個別のプロジェクトが立ち上がり、クリエイターはそのなかで力を発揮する。こういったかかわり方が部門の個別最適化を促進し、企業全体の文化・知見・歴史といったアセットを軽視する流れをつくってしまった一面がある」

田中の言う部門ごとの「個別最適化」は、企業全体の戦略より部門の戦略が優先される風土を生んできた。企業全体の変革を進める大きな推進力が必要とされている場面では、企業内のベクトルがバラバラの状態は障壁となる。では今の日本企業はどうするべきなのか。平山と田中は「100 → 1を生み出す」という考え方が重要だと語る。

「多くのイノベーションゾンビは、『0から1を生み出す』という、いわばシリコンバレー流の考え方に企業がとらわれ過ぎたことが大きな要因のひとつ。成熟した日本企業では、長い時間をかけて培ってきた独自のアセットこそが次なる変革の中核になります。100ある全社のベクトルを、変革の壁を乗り越える1つの大きなうねりに変えていく強い推進力、Driving Forceを生み出すことが大切になってきます」

【図】100 → 1の価値を生み出すプロセス/日本企業の100のアセットから1つの大きな推進力を生み出す。

日本企業再生のための“クリエイティブ”

Ridgelinezでは業種を問わず、名だたる大企業の「100 → 1」に伴走してきた。

田中 「大手貴金属メーカーでは貴金属の『希少価値』を中核にした未来ビジョンをショーケース化、大手通信キャリアでは『多次元コミュニケーション』を中核にしたメタバース世界を体験化、水道インフラ会社では『現場のノウハウ』を中核にした戦略ビジョンMAPを映像化するなど、組織横断での価値創造ストーリーを具現化しました。その結果、同類のアクティビティが統合・連携され、投資判断の意思決定を飛躍的に加速させることができました」

企業のアセットには人、ビジネス、企業風土など、多くの要素がある。100 → 1を生み出すためには、共感を巻き起こす中核を見定め、テクノロジーの力を活用しながら、ひとつの変革の推進力に統合していく必要がある。

こうした100 → 1の実現を叶えてきたのが、Ridgelinezのクリエイターだ。実はRidgelinezでは、4年前の創業時からコンサルティングアプローチをクリエイティブメンバー主導で展開し、戦略やテクノロジーを担当するコンサルタントとも共通言語で話せるチームづくりを目指してきた。そこにはRidgelinezが目指してきた、「人」を起点にした提案への想いも重なる。

平山 「成熟企業に求められるCoE型の組織運営やDXなどの部門横断型の全社変革に強い推進力をもたらすには、戦略コンサルが得意とする論理だけでなく、企業内のステークホルダーが腹落ちする感性に訴えることも非常に大切。私たちはクリエイターの“心を動かすクリエイティブ力”によって、戦略に感性を融合することで、企業がひとつのベクトルに向かうためのコアとなる価値開発からモデルづくり、そして、カタチとして具現化するまでをワンストップで提供できるのです」

上席執行役員Partner  平山将

部門の壁を越える「越境スキル」

このクリエイティブ機能を強化すべく発足したのが、「Creative Hub」だ。その重要な3つの役割を田中は以下のように説明する。

「Creative Intelligenceというケイパビリティ。次に、変革を駆動する『人』に対する深い理解。最後が100 → 1を見いだす目利き力と、それを具現化する力です」CreativeIntelligenceがどんなものかを理解するうえでは、平山の解説が参考になるだろう。

「Creative Intelligenceの核心は、『越境スキル』にあると考えています。戦略、クリエイティブ、テクノロジーの3つの機能を併せもつコンサル企業はほかにもありますが、各機能が単純に連携するだけにとどまっていることが多い。一方、Creative Hubのメンバーはビジネス、デザイン、テクノロジーの領域にまたがる知見と実践知をもっている。あらゆるステークホルダーの考えや想いを引き出し、それらをひとつに統合する高次のクリエイティブ力として機能し、100 → 1を推進するうえで欠かせないものになっています」

その力は100 → 1を見いだす目利き力にも発揮される。

田中 「戦略コンサルが得意とするロジカルな考え方では、まず経営的観点と全網羅的な発想が大切になります。しかしクリエイターはそこから本質を見抜き、余分なものをそぎ落とし、本当に大切なことを見定める“引き算の力”がある」

Chief Creative Director 田中培仁

クリエイティブとビジネスの融合という意味で、「デザイン思考」や「デザイン経営」をイメージする人もまだまだ多いだろう。しかし、Creative Hubは、これらとは一線を画す。

田中 「『デザイン思考』『デザイン経営』の文脈のなかで、多様な部門を個別に下支えしてきたクリエイティブの力を、企業全体のレイヤーにシフトさせていく必要がありました。我々Creative Hubでは、経営層と密接なコミュニケーションをとりながら、企業の価値、ストーリー、経験を抽象的な言葉で終わらせず、共感を引き起こすカタチや体験として描き上げることで、全社的な変革を支援できると考えています」

クリエイターが持つインテリジェンスは、確実にこれから日本企業を変える大きな原動力となるに違いない。

text by Ryuji Muratsugi / photographs by Kenta Yoshizawa / edited by Masako Kihara

Creative Hub
https://www.ridgelinez.com/creative-hub/

対談者

  • 平山 将

    上席執行役員Partner

    Customer Experience Practice Leader

  • 田中 培仁

    Chief Creative Dierctor

※所属・役職は掲載時点のものです。

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