COLUMN
2024/11/25

サステナブル時代におけるプロダクト・サービス再考の必要性とアプローチ
―持続可能な成長に向けた企業行動変革―

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近年、環境問題や社会問題への意識が高まる中、企業にはサステナビリティの観点に立った活動が求められている。
特に、プロダクト・サービスは、企業の事業活動における重要な要素であり、従来の考え方に加え、サステナビリティへの配慮が不可欠となっている。
本コラムでは、企業がサステナビリティの観点での活動を求められる背景を概観し、海外プレーヤーによる具体的なプロダクト・サービス再考事例を紹介したうえで、弊社の支援事例をベースにしたプロダクト・サービス再考のアプローチを解説する。

企業がサステナビリティの観点での活動を求められる背景

サステナビリティの要素の1つとして重視されるESGという言葉が世界に浸透したのは、2006年に当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が「責任投資原則(PRI)」の中で、投資時にESGも考慮すべきと呼びかけたことがきっかけだと言われている。その後、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が2015年に採択され、世界中で脱炭素社会に向けた動きが加速し、ESGへの関心と取り組みにも弾みがついた。

現在では、気候変動への対応、社会的公正の追求、透明性と責任の強化など、これらはどの企業にとっても見過ごすことのできない課題となり、サステナビリティへの取り組みは企業の持続可能性と競争力を左右する要素となっている。

本章では、政策、経済、社会、技術の4つの観点から、企業にサステナビリティの観点での活動が求められる背景について概観する。

(1)情報開示規制と企業の対応

近年、企業へサステナビリティの観点での情報開示を求める動きが活発化しているとともに、関連する各種規制が企業の事業活動へ与える影響も増大している。英国企業の調査(※1)によると、2011年~2020年の10年間で、その前の10年間の2倍超となる約1,200の規制が世界各地で施行された。さらに、2020年以降も300を超える新たな規制が次々と導入されてきた。

こうしたサステナビリティに関する情報開示の枠組みが乱立する中、企業はそれぞれ独自の形式でサステナビリティに関する情報を公開してきた。しかしながら、近年、サステナビリティに関する情報開示規制の収斂と義務化の動きが加速しており、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が定めた「IFRSサステナビリティ開示基準」をはじめ、米国の米国証券取引委員会(SEC)、欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)など、それぞれの基準に合わせた情報の提供が必要とされるようになった。

一方、情報開示のイニシアチブの中には、E(環境)の観点から、自社のプロダクト・サービスが顧客のGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量削減やエネルギー効率の向上に、どの程度貢献したかを開示するよう推奨しているケースもある。各種格付機関や投資家などのステークホルダーは、開示された情報を基に企業を評価しているとも見られることから、企業にとってサステナビリティの観点から自社のプロダクト・サービスを整備していくことが今後のポイントになる。

(2)サステナブル投資資産額と投資家意識

企業の持続可能な成長を求める投資家にとって、サステナビリティの観点での活動は投資判断の重要な要素となる。独Statista社の「ESG investing 2024」(図1)によれば、グローバルESG ETF資産(ESGに関連した目標を戦略に組み込んだETFファンドの資産)の価値は、欧州と米国を中心とした先進市場によって牽引され、2006年の50億米ドルから2023年には4,800億ドルへと大幅に増加した。

図1:グローバルESG ETF資産額の推移(2006年~2023年)
(出所: ESG investing 2024 / Statistaの情報よりRidgelinez作成)

また、英国企業が行った投資家への意識調査(※2)によると、「企業にサステナブルな行動を促すことは、その企業の長期的な価値創出につながる」という考えに同意する投資家が83%に上った。また、「高いリターンが見込めないため、サステナブル投資に魅力を感じない」と回答した投資家はわずか6%であった。

これらの統計から、サステナブル投資市場は今後も一定の規模を持つことが予想され、投資家の投資判断においても、その重要性の高さが確認できる。企業にとってサステナビリティ観点での事業活動の推進は不可欠であり、これは単なるトレンドにとどまらず、企業の長期的な発展と社会的責任を果たすための重要な要素だと言えるだろう。

(3)買い手の意識からみる企業活動

企業が事業活動を継続していくためには、買い手の信頼を獲得することが重要である。そのために企業は、社会的に有用で安全・安心なプロダクト・サービスの提供、積極的な環境問題への貢献、地域社会の活性化などを通じ、買い手に共感してもらうことが必要であると考える。

サステナビリティに関する消費者意識調査(※3)によると、「地球温暖化や気候変動対策として、買い物では環境負荷の少ない商品を選びたい」と回答した消費者は全体の66%であった。特に10代が最も意欲が高く、その約80%が「今後の買い物で環境負荷の少ない商品を選びたい」と回答した。

国際イニシアチブや投資家だけでなく買い手も、企業の社会貢献やサステナブルな取り組みを注視しており、企業は提供するプロダクト・サービスについて、このような買い手の意識を踏まえた対応が必要であると考える。

(4)サステナビリティの観点での活動を支えるテクノロジー

本章(1)~⑶にて、企業がサステナビリティの観点での活動を求められる背景を述べたが、そういった企業の活動を支えるテクノロジーも増えている。E(環境)の問題に係るテクノロジーに注目されがちではあるが、S(社会)・G(ガバナンス)等、サステナビリティ全体に関係する幅広いテクノロジーが企業のサステナビリティの観点での活動を支えていくものと見られる(図2)。

図2:企業のサステナビリティの観点での活動を支えるテクノロジーの例
(出所:各種公開資料よりRidgelinez作成)

最近では、カーボンニュートラルの実現を既存技術だけで達成することは困難であり、新技術の開発と実用化が必要不可欠と言われている。このような社会的課題を多角的に捉え、自社のプロダクト・サービスをサステナビリティの観点から見直すことで、事業全体の変革を実現し、持続可能な成長と競争力の向上を両立することができるのではないだろうか。

すでに自社のプロダクト・サービスを個別にサステナビリティの観点で見直しているとみられる企業は散見されるが、サステナビリティの観点から企業・事業全体を俯瞰的に捉えて各プロダクト・サービスを体系的に見直すことができている企業は限られていると見られる。

次章では、サステナビリティの文脈をうまく企業・事業全体の変革につなげていると見られる海外プレーヤーによる事例を考察する。

(※1)出所:「改革を迫る7つのESG規制 激変する市場でどう生き残るか」(日経ESG)
(※2)出典:「グローバル投資家意識調査2023」(Schroders
(※3)出典:「第8回サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果」(BCG

海外プレーヤーによるプロダクト・サービス再考事例

2023年6月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、自社を除くサプライチェーン(取引先のGHG排出など)や、販売後の顧客での製品/サービス利用や廃棄に伴う排出であるスコープ3(※4)の開示義務化を確定し、日本においてもサステナビリティ基準委員会(SSBJ)がスコープ3開示の義務化を議論(※5)している。企業によるサステナビリティの観点での活動が、自社のみにとどまらず、プロダクト・サービスを必要とする需要家への貢献も期待できることから、海外プレーヤーの事例は本邦企業にとって示唆になると見られる。

(1)Patagoniaの取り組み事例

サステナビリティ専門コンサルティングであるQuantis社の調査によると、世界で排出されているGHG排出量の最大で10%はアパレル産業によるものと見られ、毎年約20~32.9億トン相当の二酸化炭素を大気に放出している(※6)。

このような状況下において、米国を拠点にアウトドア用品の製造・販売を行うPatagoniaは、「プロダクトの再考」「消費者への環境意識の提言」「業界イニシアチブの発揮」といった活動を通じて社会にプロダクトストーリーを伝えてきた。

プロダクトの再考については、1996年、当時使用していた繊維の環境負荷に関する調査を踏まえ、すべてのコットン製品をオーガニック製に切り替えたことに加え、可能な限りリサイクル・コットンを原料として取り入れることで、従来に比べて二酸化炭素換算による排出量を1kgあたり82%削減することができた。

それ以来、環境に望ましい素材の採用を増やし、2022年時点の全製品ラインにおけるその割合は88%を占める。Patagoniaは現在、2025年までにリサイクルではない未使用・未加工の石油を原料とするバージン石油の素材を自社製品から排除することを進めている。

また最近では、サプライチェーン全体で持続可能な取り組みを推進する一環として、環境への影響を最小限に抑えた包装の使用を促進することを目指し、非営利団体のキャノピーが主導するサステナブル・パッケージング・イニシアチブ「Pack4Good」に参加している。最終的には、2040年までにPatagoniaのビジネス全体においてネットゼロを達成することを宣言しており、これはスコープ1、2、3のカテゴリーにおける総排出量の90%を削減することを意味する(※7)。

消費者への環境意識の提言については、2011年にニューヨーク・タイムス紙に掲載された、過剰消費を控えるよう呼びかけた「Don’t Buy This Jacket」キャンペーン広告が挙げられる。これは、製品のライフサイクル全体での環境負荷を考慮し、必要なものだけを購入すべきというメッセージを伝えるためのものであった(※8)。

さらにPatagoniaは自社だけでなく、アパレル業界に行動変革を起こすべく、業界へのイニシアチブを発揮している。一例として、自社製品が環境に与える影響を測定するツールを開発するため、世界最大の小売企業であるWalmartとともに「Sustainable Apparel Coalition(現Cascale)」というアパレルブランドの業界同盟を発足した(※9)。

現在では、adidas、Amazon、Burberry、GAP、H&M、Nike、帝人、東レ、ファーストリテーリングなど、300以上の企業・団体が加入している(※10)。

これらの取り組みの結果、Patagoniaの理念を支持する顧客が増加し、2023年時点の売上高は過去10年間で4倍以上の約15億ドルに達し、収益も年間約1億ドルを計上している(※11、12)。

(2)Appleの取り組み事例

米Appleはスマートフォン生産に使用する部材の将来的な枯渇を背景とした供給難を見越し、それらのリサイクルやスマートフォン本体のセルフ・サービス・リペアプログラムを積極的に推進し、エンドユーザーの製品需要の高まりや、製品の耐用年数延長に応える取り組みを推進している。

スマートフォン用部材のリサイクルについては、例えば、Mac Book AirやApple Watch Series9の全部材に占めるリサイクル材の使用割合が、それぞれ、50%、30%となっている。また、iPhone15では、バッテリー用コバルト、バイブレーションユニットで使用するタングステン、回路基板の金メッキなどで100%再生材を利用している。

また、PCやスマートフォン本体のセルフ・サービス・リペアプログラムについては、2022年より米国内で開始されており、修理ツールキットをUSD49/1週間レンタルすることができ、自己で修理をすることが可能なサービスである。過去のモデルではパネルの開封時に固定用のツメが破損することや、バッテリーが回路基板にハンダ付けされていることなど、修理自体が困難な設計により、買い替え前提になっていた。それに対して欧米を中心とした製品サステナブル化の声が上がり、Appleが応える形で、本プログラムは2022年に米国で開始され、現在では対象地域は米国だけではなく欧州32か国にも拡大している(※13)。

こうした取り組みを通じて、米Appleでは、2050年に枯渇が懸念される資源に依存しない形での持続的な製品供給を実現しようとしている。また、主力製品のiPhone出荷台数シェアで2023年にシェア20.1%でSamsungを抜きスマートフォンシェアのトップに立っており、このような取り組みを推進しつつも業界における存在感を示し、サステナビリティと事業を両立している。

(3)DANONEの取り組み事例

仏の食品大手DANONEは、2017年に発表した「One Planet . One Health」(人々の健康と地球の健康は相互につながっている)というビジョンに基づき、持続可能なプロダクト・サービスの取り組みを推進している。その取り組みは高く評価され、2023年には、英国の非営利団体CDP(※14)より、CDPが評価した企業21,000社のうち、12社しか選ばれていない最高位のトリプルA評価を獲得した(※15)。

One Planet(環境)の取り組みでは、DANONEのビジネスモデルの中でGHG排出量の約60%、水利用量の約90%を占める農業分野において(※16)、土壌の健康を守るだけでなく、土壌の改善・再生を目指す「環境再生型農業」への転換を推進している。その成果として、契約農家の19.7%が「環境再生型農業」に転換したことにより、スコープ1、2、3におけるバリューチェーン全体のGHG排出量において、2021年時点で2015年比27.1%の削減に至った(※17)。

環境再生型農業は、地球環境と農家の両面への貢献が期待されており、具体的には、土を耕さずに農作物を栽培する不耕起栽培・家畜の排せつ物の利用・輪作などによって、GHG排出量の削減だけでなく、安定した食料生産や収穫量の向上にもつながると言われている。生物多様性に関する国際的ビジネス連合のOP2B(※18)は、環境再生型農業について、生物多様性の保護と向上/土壌の炭素と水の保持能力向上による植物と家畜、農業の力の活用/農場コミュニティの生活サポートという4つの目的の下、炭素含有量/農薬の使用量/化学肥料の投下量/農家の年間所得などの計8つの指標を定めており、より多くの企業が環境再生型農業に取り組めるよう推進している。

また同社では、環境再生型農業への転換にとどまらず、植物由来の製品への転換、持続可能な包装容器への変更、食品ロスの削減に向けた賞味期限の延長など、様々な取り組みから持続可能な成長に向けた活動を推進している。

One Health(健康)の取り組みでは、DANONEが提供する食を通じて、購入者が健康的で持続可能な食生活を送れるよう努めている。例えば、世界の消費者の42%が動物性食品の消費を控えていることや(※19)、欧州の消費者のうち、37%がヴィーガン・ベジタリアン・フレキシタリアンの食事を選択し、69%の親が自分の子どもに植物由来の食品を多く与えたいと考えていること(※20)を背景に、植物性タンパク質を60%配合した、ベジタリアン向けに作られた粉ミルクを販売している。

DANONEでは現在、One Health への取り組み促進を図るため、2025年までのKPIとして8項目を掲げており、DANONEの提供するプロダクト・サービスへ反映させている(※21)。

多国籍企業であるDANONEは、現在120か国以上で事業を展開しており、様々な国・地域で持続可能な取り組みを促進している。具体的には、DANONE Japanでは、2020年5⽉にB Corp認証を取得した。B Corpは国際的な認証制度で、社会や環境に配慮した事業活動において一定の基準を満たした企業のみに与えられるものであり、世界標準の「良い会社」の証として知られている。また、DANONE Canadaでは、再生可能エネルギーへの移行・水資源の持続可能な管理・包装の責任ある使用など、様々な持続可能性イニシアチブに取り組んだ結果、持続可能性と社会への貢献に対するリーダーシップが認められ、2024年にインパクトアワードを受賞した。

このようにDANONEは、サステナビリティに関する取り組みを積極的に推進しつつも着実な成長を遂げている。2020年と2023年の業績を比較すると2023年度は、売上高 276億ユーロ(+17% 20年比)、営業利益 35億ユーロ(+4% 20年比)と、原材料やエネルギーなどを中心にインフレ傾向が続く中でも業績を伸ばしている。(※22)

これまで見てきた海外プレーヤーの各事例から、サステナビリティの観点からのプロダクト・サービス再考に関する示唆が得られるだろう。自社にとって有用と見られる要素をうまく取り込んでいくためのアプローチ例について、次章で説明する。

(※4)出典:「知っておきたいサステナビリティの基礎用語」(経済産業省 資源エネルギー庁)
(※5)「SSBJ基準案の概要(2024年7月)」(サステナビリティ基準委員会(SSBJ)事務局)
(※6、7)出典:環境的責任プログラム(Patagonia HP)
(※8)出典:Don’t Buy This Jacket(Patagonia HP)
(※9)出典:「《FB用語解説》SAC 持続可能な社会目指す団体」(繊研新聞)
(※10)出典:「グッチからパタゴニアまで——本当のサステナビリティをめぐる、ファッションの挑戦。」(VOGUE JAPAN)
(※11)出典:「パタゴニアのサステナブルなビジネスと新体制」(WWDJAPAN Digital)
(※12)出典:「Op-Ed: Patagonia Proves the Success of Sustainable Corporations」(COLLEGE OF LITERATURE SCIENCE, AND THE ARTS)
(※13)出典:「Apple expands Self Service Repair Diagnostics support to Europe」(Apple HP)
(※14)解説:2000年に発足した英国の非政府組織(NGO)。投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営(一般社団法人 CDP Worldwide-Japan)
(※15)出典:「CDP「トリプルA」に花王と積水ハウス 気候変動・フォレスト・水セキュリティの3分野」(The Asahi Shimbun SDGs ACTION!)
(※16)出典:「DANONE FOR A REGENERATIVE FUTURE 」P2
(※17)出典:「DANONE UNIVERSAL REGISTRATION DOCUMENT ANNUAL FINANCIAL REPORT 2021」P165
(※18)解説:One Planet Business for Biodiversity の略。2019年国際連合のクライメートアクションサミットを基にできた、農業の生物多様性に特化したビジネス連合
(※19)出典:「Trends to Watch in Plant-Based Milk」(EUROMNITOR INTERNATIONAL)
(※20)出典:「Danone marks industry 1st with launch of new Dairy & Plants Blend baby formula」(DANONE HP)
(※21)出典:「ANNUAL INTEGRATED REPORT Danone’s sustainability」P15,16
(※22)出典:「SPEEDA Company Financial Summary」

プロダクト・サービス再考支援のアプローチ事例

本章では、実際にRidgelinezがクライアントのプロダクト・サービス再考支援に携わったプロジェクトにおけるアプローチ方法の一例を挙げる。企業がサステナビリティの観点から自社のプロダクト・サービスを体系的に見直すにあたり、プロダクト・サービスの市場分析を行ったうえで、ビジネスプロセスをリデザインし、マスタープランを策定するといったアプローチ(図3)が考えられる。

図3:プロダクト・サービス再考の流れ

計画&準備
企業がサステナビリティの観点から自社のプロダクト・サービスを体系的に見直すには、パーパスやマテリアリティなど、自社の目指す方向性との整合性を取る必要があるため、準備段階でこれらの情報を確認しておくことが望ましい。また、検討を進めていくためのタスクやスケジュールの明確化や関係者との調整、サステナビリティに関する最新情報の収集等も進めておく必要がある。

プロダクト・サービス市場分析
「外部環境分析」では、サステナビリティの観点から市場動向調査や有望市場の明確化、競合動向調査、競争状況の整理等を行うことが考えられる。例えば、サステナブル市場動向調査では、自社の業界におけるサステナビリティ関連のプロダクト・サービス市場の現状や、規模・成長性の観点から将来有望な市場を把握し、ターゲット市場群としてESG観点で分類・可視化する。また、競合動向分析では、市場動向調査を基に可視化したターゲット市場群において参入している競合プレーヤーを特定し、各プレーヤーの特徴や強み、また市場群のブルーオーシャンやレッドオーシャンを整理・把握する(図4)。

「内部環境分析」では、自社のプロダクト・サービスをリストアップしたうえで、「外部環境分析」で明らかになったターゲット市場群に配置し、自社の市場カバレッジを把握する(図4)とともに、自社の強みや弱みを確認しておく。

「クロス分析」では、外部環境と内部環境の分析結果を統合し、各種市場に対する方針を明確化する(図5)。自社にとって最優先すべき市場やスコープアウトすべき市場を明確化したうえで、ブルーオーシャンであっても自社の強みが活かせない市場やレッドオーシャンであっても自社の強みを活かせる市場について、それぞれ参入余地の検討や勝ち筋の検討を行う。また、各市場ですでに提供されているプロダクト・サービスの相場観を把握し、プライシングの考え方についても整理しておく。

図4:競合動向ヒートマップ図

図5:クロス分析 市場マトリックス図

ビジネスプロセス・リデザイン
「ビジネス・リデザイン」では、「クロス分析」で絞り込んだターゲット市場を起点にビジネスモデルを再構築する。サステナビリティの観点でプロダクト・サービスの提供モデルをゼロベースで見直すとともに、価値を提供するために必要なリソースを自社で賄えるのか、外部資源の活用が必要なのかについて大枠での検討を行う。また、マーケティング方針(GTM:Go To Marketの考え方)についても、検討しておくことが望ましい。

「内部資源設計」では、「ビジネス・リデザイン」で定義されたビジネスモデルを実現するために必要な組織体制やリソースを具体化していく。

「外部資源設計」では、自社だけでは不足しているリソースやノウハウ(技術・専門知識)、資金等を補完するための要件を明確化し、外部パートナーの選定や各種交渉等を進めることになる。

マスタープラン策定
最終ステップでは、検討してきた内容を踏まえたマスタープランを作成する。オファリング開発や顧客アプローチも踏まえた具体的なアクションの洗い出しおよびスケジューリングとともに初期財務モデリングを行っておくことで、サステナビリティ観点から見直した新たなプロダクト・サービスを提供していくための計画を固める。

まとめ

本コラムでは、持続可能な成長に向けた企業行動変革に向け、企業のプロダクト・サービス再考の必要性とアプローチについて紹介した。企業がサステナビリティの観点で活動を求められる背景には、各国政府や国際機関からの情報開示の要請や投資家・買い手の期待の変化があり、昨今では、サステナビリティに関する取り組みを加速している企業も散見される。本コラムで紹介した海外企業の事例からは、自社製品の環境負荷低減にとどまらず、消費者への働きかけまで踏み込んだ活動や、将来的に、枯渇が懸念される資源に依存しない製品供給を実現するための活動を推進しながらも、うまく事業活動とサステナビリティの取り組みを両立しているケースが確認された。企業におけるプロダクト・サービス再考のアプローチの事例では、我々の業種特性から詳述することの難しい部分もあったが、本コラムが同様の取り組みで苦心されている企業や検討しているご担当者の方の一助になれば幸いである。

Ridgelinezでは、特定の専門分野や業務の垣根を超えたコンサルティングを提供することで、企業の課題に向き合い、持続可能な社会の構築・成長を包括的に支援している。サステナビリティの観点での活動に向け、これから取り組む企業や、自社のみでの取り組みに限界を感じている企業や担当者の方に伴走型でのサポートを提供することで、貢献していきたい。

執筆者

  • 渡瀬 博文

    上席執行役員Partner

    Utility, Transportation & Public Services Practice Leader

  • 関 優子

    執行役員 Partner

    Sustainability Transformation Practice Leader
    Chief Diversity & Inclusion Officer

  • 佐野 豊人

    Director

  • 福田 隆志

    Manager

  • 髙木 賢

    Consultant

※所属・役職は掲載時点のものです。

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