ITMediaエンタープライズ 「国内でも本格化する「プロセス・オーケストレーション」をどう実現すればいい?」記事掲載のお知らせ
2022年03月29日 メディア掲載
ITMediaエンタープライズ(2022年3月29日公開)にインタビューが掲載されました。多くの企業が抱える、システムのサイロ化と業務プロセスやデータの分断といった課題を解決するプロセス・オーケストレーションについてお伝えしています。
国内でも本格化する「プロセス・オーケストレーション」をどう実現すればいい?
変化に強い業務システムを実現するにはツールの設計に合わせた標準化が重要だ。だが、生産性を重視するならば部門が求める業務特化型アプリを否定するのは困難だ。業務システムのサイロ化を回避しながら生産性を高める方法はあるのだろうか。
ベストプラクティスがあるのにデータのサイロ化やプロセス分断はなぜ起こるのか
リッジラインズの島田裕士氏
多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)を停滞させている課題がある。システムのサイロ化と業務プロセスやデータの分断だ。経理や購買、人事労務などで部門ごとに最適な業務アプリケーションを採用した結果、部門を横断した業務プロセス改善やデータ活用が難しいという状況がある。
この課題の解決策として、ERPベンダーのスイート製品に期待が寄せられたこともある。企業の業務を網羅したスイート製品を全社的に導入することで、部門や業務をまたいだ業務プロセスやデータ連携がスムーズに進むと考えられたのだ。しかし、それは「過剰な期待だった」と話すのは、業務プロセス自動化に関するコンサルティングサービスを提供するRidgelinez(リッジラインズ)の島田裕士氏(Competency Group Director)だ。
島田氏は「一口にERPスイートといっても、製品ごとに品質や機能、使い勝手が大きく異なる」と指摘する。全社的な業務プロセスやデータ統合を目的にトップダウンでERPスイートを導入すると、場合によっては実務担当者に使い勝手の悪いツールを強要することになりかねない。「実情に合わない標準化を押し付けても、生産性が低下したり、業務改善や効率化に対する現場の意欲をそいでしまったりする恐れがある」(島田氏)
結局は、業務ごとに最適なものをベストオブブリードで使わざるを得ず、プロセスの分断やデータのサイロ化を止められない。「サイロ化したシステムのデータを経営に生かすために手作業でデータを収集することも珍しくなく、収集の手間を軽減するためにRPA(Robotic Process Automation)を導入する企業もある」(島田氏)
だが、RPAにできることは限られており、業務システムのサイロ化や業務プロセスの分断を解消するのは難しい。
組織改革とプロセス・オーケストレーションの両輪でサイロを解消する
リッジラインズは、SaaS(Software as a Service)とiPaaS(Integration Platform as a Service)を活用した「プロセス・オーケストレーション」のアプローチで、この問題の解決を進める。
プロセス・オーケストレーションとは、iPaaSなどを使ってさまざまなアプリケーションを連携させ、部門やシステムを横断して業務プロセス全体を連動させることで自動化や省力化を実現するアプローチだ。「業務アプリケーションをつないで業務の自動化を実現し、データも集約する。このデータを分析してビジネスの変革につなげる」と島田氏は説明する。
同社の大久保 知洋氏(Technology Group Manager)はリッジラインズの特徴として、プロセス・オーケストレーションを活用して組織とビジネスを変革するための戦略策定やアプリケーションの活用支援、人材育成までを包括的に支援できる点を挙げる。
「ツールの活用だけでなく、組織全体でDXに関連する具体的な目標を立ててどう推進組織をつくるか、デジタル人材を社内でどう育てるかといった組織面の改革との両輪で変革を支援するのが、私たちが提案するプロセス・オーケストレーションの特徴」と大久保氏は語る。
「デジタルのことはIT部門やベンダーにお任せ」という部門は少なくないが、それでは組織一丸となってDXを進めることはできない。そこで、初めにユーザーインタフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)が優れたアプリケーションに触れてもらい、「デジタルではこんなに革新的なことができるのか」「複雑で難しいものだと思って敬遠していたが自分たちでもこんなに簡単に使えるのか」と実感してもらってから、DX人材の育成につなげるケースもあるという。
リッジラインズは前段のプロセス・オーケストレーションに特化した専門チームを設け、そこに約60人のDX支援エキスパートが参画しており、iPaaSに限らずDX推進に役立つシステムやサービスを日々リサーチしている。ベンダー中立で最適解を提案するポリシーを貫く点も同社の特徴と言える。
アプリ間をつなぐエンタープライズiPaaS「Workato」で自動化、承認レスを目指す
iPaaSを使うことで、個々のアプリケーションをつないだ社内の業務プロセスを社外のプロセスと連携できることも大きな利点だ。
購買プロセスでは社外のサプライヤーと見積もりや発注などのやりとりを帳票データや書面で交わすことがある。この場合、購買管理システムへの入力作業が別途必要だが、人が介在すれば手間と時間がかかり、ミスが生じるリスクもある。
プロセス・オーケストレーションでこの課題を解消するには、購買管理SaaSである「SAP Ariba」や間接材調達管理SaaSの「Coupa」などを導入して見積もりや契約、発注などの業務をデジタル化する。さらにiPaaSで購買ネットワークの購買データを社内の基幹システムに取り込む仕組みをつくる。
この調達から会計までの一連の手続きをデジタル化することで、処理人員のリソースがなくても取引先とのやりとりを一元管理できる。
リッジラインズが現在、力を入れて取り組むiPaaSの一つが「Workato」(ワーカート)だ。オンプレミスやクラウド系の業務アプリケーション、「Slack」や「Box」などと連携できるコネクターを1000種類以上用意しており、ローコード/ノーコードでさまざまな業務プロセスを自動化できる。単につなぐだけでなく、データを抽出・変換する機能もあり、「Snowflake」「BigQuery」「Redshift」などのクラウドデータウェアハウスにも対応する。
「Workatoは国内でも採用数が急速に伸びており、これから広範な普及が見込まれるiPaaS機能を持つ自動化プラットフォーム。UI/UXの設計も良く、ITエンジニアでなくてもシステムを横断した自動化を組み立てやすい。当社のエキスパートにもファンが多い」と島田氏も高く評価する。
リッジラインズが社内で実践した業務自動化の取り組みは、米Workato主催の「Unstoppableアワード」において「イノベーション部門」を受賞した。Workatoを使って、経費精算サービス「SAP Concur」(以下、Concur)やSlackといった複数のサービスを連携させた経費精算プロセス自動化の取り組みが評価された。
リッジラインズの取り組みは米Workato主催の「Unstoppableアワード」において「イノベーション部門」を受賞した。
写真は受賞の盾を持つ同社大久保 知洋氏
同社は経費精算にConcurを利用しており、申請者や承認者はConcurにアクセスして手続きをこなしていた。申請内容は分析担当者が手作業でチェックしていたため、この部分をWorkatoで自動化した。
仕組みは下図の通りだ。申請者がConcurに登録した経費申請の内容を、Workatoのルールエンジンを使って検証。複数の評価項目でチェックして申請内容に不審な点(金額が高過ぎる、頻度が多過ぎるなど)がなければWorkatoが自動で承認し、その証跡をSlackに自動出力する。
不審な点がある場合はチェック結果を承認者にSlackで通知して確認を促し、問題がなければ承認者はSlackで承認することも可能だ。この仕組みであれば、人間に判断を委ねる操作を自動的に選別でき、その操作も日常的に使うツールに一本化できる。業務ごとに別のツールを開いてマニュアルを参照しながら個別の表示内容を確認して承認するといった、作業負荷の高い操作をエンドユーザーに委ねずに済む。「最終的には“承認レス”の経費精算プロセスの実現を目指している」と大久保氏は語る。
リッジラインズにおける複数システムを横断した業務自動化の実例
(出典:リッジラインズのWebページ)
他にも同社は、申請内容に誤りや不正傾向がないかどうかをAI(人工知能)で検証する「経費不正検知エンジン」を「Microsoft Azure」に構築中だ。最終的には本AIエンジンを利用した不正検知から結果の通知まで全てをWorkatoで自動化する計画だ。
「Workatoを使えば、Slackに限らず、使い慣れたアプリケーションをUIとして利用しながら、承認レスのスピーディーな経費申請が実現する」(島田氏)
コネクテッド・プランニングで計画系業務もデジタルにつなげる
システムのサイロ化はコーポレート組織だけの問題ではない。生産計画や販売計画、営業計画などの計画系の業務も部門ごとにサイロ化しやすい領域だ。各部門が個別に計画を作り、生産・販売・在庫計画調整会議などの会議体で数字を集めて全社予算を作ることが多い。だが、それぞれの計画が連動しないため整合性を取りにくく、合理的で無駄のない計画を組みにくい。
リッジラインズはこの課題への解決策の一つとして、「コネクテッド・プランニング」を提案する。
「コネクテッド・プランニング」はビジネスプランニングツールを提供する「Anaplan」(アナプラン)が最初に訴求した概念で、近年ではGartnerが「xP&A」(エクステンテッド・プランニング&アナリシス)という考え方を発表して注目を集めている。
Anaplanは、財務や営業、サプライチェーンなど、業務を問わず複数のシステムを連携させて計画管理を自動化する機能を持つ。
販売計画を変更すれば、それに連動して生産計画や購買計画も設定したロジックに従って自動的に見直される。販売計画を上方修正したのに生産体制が追い付かなかったり、必要な資材を確保できなかったりといった計画の連携不足による機会損失を防げる。
Anaplanを使ったコネクテッド・プランニングの例
(出典:リッジラインズ提供資料)
「多くの企業は上図の(1)(2)の段階にある。複数の部門の計画を連動して見られれば経営のスピードは格段に上がる」と島田氏は話す。
リッジラインズは現在、各種の先進ツールを用いたプロセス・オーケストレーションにより、企業内外のアプリや業務をデジタルにつなぎ、自動化や効率化を支援している。島田氏は「少子高齢化に伴って働き手が減り続けるいま、プロセス・オーケストレーションこそ全ての企業が取り入れるべきアプローチだ」と力を込める。
リッジラインズは、変革への志を持つ「チェンジリーダー」と共に、未来を変え、変革を創る変革創出企業です。お客さまの変革プロセスの最初から最後までを支援するコンサルティングサービスを展開しています。
転載元:ITmedia エンタープライズ 2022年3月29日掲載記事より転載
本記事はITmedia エンタープライズより許諾を得て掲載しています。
記事URL:https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2203/28/news011.html
※所属・役職は掲載時点のものです