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社内イベント「RidgeLIVE」 多様性との向き合い方を考える、インクルーシブな組織に必要なものとは

リモート中心で働く中で、共に働く仲間を知り、知見と学びを共有するRidgelinezの社内イベント「RidgeLIVE」。プロジェクト紹介やD&Iに関することなど、毎回さまざまなテーマを取り上げています。

今回は、日本IBMやファイザー製薬、PWCをはじめ、流通業界を中心に業務変革、システム導入、デジタル化など広範囲な経験を有する、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社執行役員(IT・デジタル推進室担当)小山徹氏をゲストにお迎えし、弊社今井俊哉、関優子が「多様性との向き合い方を考える、インクルーシブな組織に必要なものとは」をテーマに対談を行いました。

(本記事は、20221122日開催のRidgelinez社内イベント「RidgeLIVE」をもとにまとめたものです。)

 

目次

  1. 組織における“多様性”の本質
  2. D&Iとビジネスの関係性~多様な価値観の中で、お客様といかに向き合うか
  3. インクルーシブな組織に、必要なものとは

 

 

1.組織における“多様性”の本質

関優子(以下、関):多くの企業が「多様性」を重要だと捉えD&Iに取り組んでいますが、「多様性」と一言でいっても、バックグラウンドや経験、価値観など、「内面的な多様性」も重要だと考えています。お二人は、多様性を組織の力に変えるためには、どうすればよいとお考えでしょうか。

 

小山徹(以下、小山):私個人としては、「あるものをそのまま受け入れる」「受け入れることが難しい場合でも受け止める」ことをモットーにしています。世の中には、理解不能なこともたくさんありますよね。でも、そこには必ず何らかの意思を持って実行した人がいるわけです。「そういう考え方もある」と考え、自分の価値観を押し付けないこと。これがまず重要です。

また、考え方の多様性でいうと、御社のようなDXを支援するコンサルティングファームは、そもそも「多様であること」がベースですよね。いろいろな環境で育った人がいて、得意分野・苦手分野があり、業種・職種もさまざまで、それぞれの専門分野がある。とはいえ、自分たちが素晴らしいチームだと感じていても、お客様からみて魅力的でなければ、組織の力にはなっていない。だからこそ、自分たちの「多様」という土壌をより一層重視しないといけない。さまざまな立場や意見がある中で、お客様の本来のニーズを考える際、自分の考え方の「引き出し」を増やしておかないと、問題の本質に迫ることは難しいと私は思っています。

 

関:引き出しを増やす。それはお客様のことを考えるからこそですよね。価値を最大化する上で、自分の引き出しを増やして、お客様のニーズに沿ったサービスを提供していくことが大切という言葉がとても響きます。

 

今井俊哉(以下、今井):小山さんのおっしゃる通りです。引き出しを増やすことで、守備範囲が広くなる。お客様が話したことに対して、「なぜそう言っているのだろう」と私が感じたとしても、それはあくまでも、私の価値観の範囲です。例えば、その場に小山さんや関さんがいたとします。それぞれの考え方があり、それぞれに納得できる事とそうでない事があるはずです。多様な視点、多様な価値観の中から出る道筋の違いが、面白いんですよね。

キャラクターの異なるメンバーが集まれば、考え方も価値観も多様化する。これは、守備範囲、いわばキャッチャーミットのサイズを大きくしているんですよね。

 

小山:確かに。お客様は、何らかのイシューやニーズを求めて相談されるわけですが、多様な視点、多様な価値観があることでニーズの裏側に何があるのかが見えてきますよね。キャリアの少ない若い世代の場合でも、イマジネーションを働かせることで「お客様のニーズはきっとこういうことなのだろうな」という予想ができるはず。もしかしたら、僕たちが過去の経験から出す発想よりも、もっと新しい価値を生み出せるかもしれない。若い世代はもちろん、いろいろな経験・価値観が融合するからこそ、多様性は活きてくるんですよね。

 

関:目に見える属性だけでなく、価値観・考え方が多彩であることが、“多様性”の本質、ということですね。一人ひとりが、自分の意見を発言でき、それが組織の貢献につながる、というポジティブな連鎖が生まれるのが理想ですね。

 

2.D&Iとビジネスの関係性~多様な価値観の中で、お客様といかに向き合うか

小山:D&Iは、ビジネスで新しい価値を生み出す上で不可欠なものです。私はさまざまな業界で仕事をしてきましたが、自分の引き出しを多く持つことと同時に、生活者の視点をイメージして考えることを、常に大切にしています。

 

今井:どの業界においてもお客様の視点で見ることが重要で、それは、「立ち位置を変える」ということですよね。立ち位置を変えると、同じものを見ていても違った風景が見えてくる。それを、常に自分の中に持っていることに意味があるんです。「相手は何をすれば喜んでくれるのだろう」と、自分事として考える。つまり、「独りよがりにならない」ことともいえます。同じことを話していても捉え方が人それぞれなのは、バックグラウンドや立ち位置が違うからです。まずはそこに気づくことがスタートですね。

 

関:まさに、弊社の特徴である「人起点」の発想ですね。お客様と目線は揃えつつも、自分の価値観が、常識化・固定化したものでないかを常に意識すること。同質化のリスクも、意識しておきたいものです。

 

小山:とはいえ、共感しようと思っても、相手によっては常にうまくいくとは限りませんが(笑)。たとえば、「DXを推進したい」と言って表面的に新しいテクノロジーを導入しても、いかんせん、考え方が旧態依然のままだと変革は進みません。この裏側には、今までのやり方でOKという「同質化」があります。日本社会がこの20年間変化できなかった背景にも、このような変わることへのフリクションがあると感じています。変わろうとしている人からすると、同質化の圧力は恐怖そのもので、変革のリスクにもなり得る。真に変革を考えるのであれば、業界や過去のしがらみを断ち切ることも必要だと、声を大にして言いたいですね。

個人で意識できることで言うと、コンフォートゾーンを抜け出して、狭い範囲でもチャレンジしていくことをおすすめしたい。そして、マネージャーや経営層はその姿勢を正しく評価してください。「やってみよう」と思う部下の気持ちを応援し、そういったことができる土壌作りに邁進してほしいですね。

 

今井:Intellectual Risk (インテレクチュアルリスク)をとる」という言葉を使う事があります。思いつきではなく、データなりロジックに基づいた考え方に沿って、リスクを伴いながらもチャレンジする、勇気ある姿勢で物事を進めるということですが、私たちマネジメント層は、その勇気を打ち消さない環境を作ることが役割です。特に日本のマネジメントは、型にはめて評価しがちですが、Intellectual Riskとっていく人を止めてはいけません。

 

3.インクルーシブな組織に、必要なものとは

小山

マネジメントは難しいですよね。過去を思い返すと、私自身もインクルーシブな組織というものを理解していなかったと思います。当時は「引き出し」が少なく、自分の考えを押し付けてしまい、結果として経営層を怒らせてしまった事も・・・。ただ、そういった経験があったからこそ、引き出しを増やす姿勢や、「Equity(公平性)」の大切さ、「心理的安全性」の本質を学ぶことができたと思います。

 

関:「心理的安全性」は、まさに昨今、バズワードのような扱いになっていますね。多様な人々が発言・議論できるような機会を提供し、その場を担保すること。その先のお客様のことを考えるからこそ、リスクをとれる発言が生まれる。そういった環境が、本来の「心理的に安全な場所」、生ぬるい馴れ合いではなく、チャレンジングであれ、ということですよね。

 

今井:お客様に対して言いにくい事であっても、お客様にとっての真の価値を提供することが我々の存在意義なのです。その過程で、社内で生まれる意見の衝突は健全であり、不可欠です。対同僚、上司、部下がそれぞれの立場で、プロフェッショナルとして議論し価値提供に繋げること。ハードでチャレンジングな環境において、お互いの意見を伝え、価値を最大化していくことが命題です。

 

小山:無限の情報が容易に入手できる現代においてこそ、人そのものの価値が問われています。自身の「引き出し」を増やすには、コンフォートゾーンから抜けだす勇気を持ち、世の中を知る事が大切です。繰り返しになりますが、マネジメント層は「チャレンジ」に対して、適正に評価することはいわずもがなですね。

 

今井:チャレンジを否定してしまうと、殻に閉じこもってしまいますよね。本に書いてある事を読んで終わりではなく、実際にやってみるという経験が重要です。受け止める立場としてはディフェンシブにならないこと。それが何より難しいのですが、私たち経営層は特に意識しておくべきところです。

 

関:それが、インクルーシブであるということですね。インクルーシブであることで、はじめて多様性が活きてくる。

今の自分にはどのような経験が必要なのか?ひとりひとりがオーナーシップを持ち、考え、実際に行動することで「引き出し」を増やしていく。それが結果的にお客様への価値に繋がるのですね。

 

  • 小山 徹エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
    執行役員
    日本アイ・ビー・エム、ファイザーを経てPwCへ。流通業界を中心に数多くのコンサルティング経験を有する。
    2014年 三越伊勢丹ホールディングス役員 兼 三越伊勢丹システム・ソリューションズ代表取締役社長として構造改革を推進し、IT 戦略部長としてグループガバナンスの推進に着手。
    2017年 PwC Japanグループ 小売・流通セクター統括パートナーに就任。退任後は複数企業のアドバイザーを歴任し、2021年4月よりエイチ・ツー・オー リテイリング 執行役員(兼 阪急阪神百貨店 執行役員 兼 H2O 食品グループ 執行役員)グループCIO/CDOに着任しグループ全体のデジタル変革を推進着任後1年で経産省 DX認定企業に選定。

    エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社:関西エリアを中心に、百貨店や食品スーパー、商業施設、専門店やコンビニエンスストアなどの事業を展開。株式会社阪急阪神百貨店や、株式会社関西スーパーマーケット、イズミヤ株式会社、株式会社阪急オアシスを傘下に持つ。

 

  • 今井 俊哉Ridgelinez株式会社
    Chief Executive Officer
    約30年にわたり、コンピュータ・メーカー、ITサービスプロバイダー、電子部品メーカー、自動車メーカーに対し、全社戦略、営業マーケティング戦略、グローバル戦略、IT戦略などの立案、組織・風土改革、ターンアラウンドの実行支援などのプロジェクトを多数手がける。富士通を経てブーズ・アレン・アンド・ハミルトンに14年在職。その後、SAPジャパン(バイスプレジデント)、ベイン・アン ド・カンパニー(パートナー)、ブーズ・アンド・カンパニー (代表取締役)、PwCコンサルティング(副代表執行役)を経て、2020年4月より現職。

 

  • 関 優子Ridgelinez株式会社
    Chief Diversity & Inclusion Officer
    約20年にわたり、コンサルティング、自動車、Eコマース業界にて経営陣と共に経営戦略、組織開発、組織・風土改革、CX、従業員エクスペリエンスなどのプロジェクトを手がける。日産自動車に加え、ブーズ・アレン・ハミルトンの米国本社に延べ15年在籍。その後、デロイトトーマツコンサルティング(経営企画担当執行役員)、アマゾン(コンフィデンシャルプロジェクト)を経て現職。

※所属・役職は掲載時点のものです